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人文情報学科では何を勉強するのですか [ゼミ・教育]

 これは、オープンキャンパスで受験生(や、その親、先生など)からよく聞かれた質問である。どの学部や学科でも、そのような質問がでるのか、それとも、それは「人文情報学科」だからなのかは、僕には分からない。ただ、史学科や文学科では、そのような質問は出ないだろうから(そういう場合は、自分のやりたいようなことができるかを聞くかも知れない。)、とりあえず、「人文情報」という、よく分からない名称の学科だから出る質問だと考えておこう。

 それに対して僕は、おおよそ次のような答えをしてきた。普通、情報学科というと、理科系ないしは専門学校で、一定の、体系立った知識や技術を勉強することが主眼となるだろう。しかし、人文情報学科では、技術は必ずしも一から十まで、理論も含めて全部教えることはしない。特に理論的な部分は、必要最低限である。その代わり、何をしたいか、あるいは何をすべきかを考えられるような授業を重視する。

 つまり、自らテーマを見つけ、そのテーマについて考え、調べ、何らかの解決策を提案し、それを実際の作品で実現していく、というプロセスを、何度もトレーニングする。そうして、何をしたらいいかが分かったら、それを実現するために必要になる技術を、その段階で学べるようにする。必要な技術を必要なときに、必要な範囲内で学ぶ。そういう意味で技術・理論主導ではなく、必要性や目的を見出し、それを解決するような思考が大切だと考える。

 それでは問題はどこにあるのか。人間社会は、基本的に文系の原理で動いている。人間が主体となり、また人間を対象とする活動は、文系の視点からしか理解することが出来ない。そういう中で、人々がそれぞれの仕事や分野、活動領域で何を望み、何が必要とされ、何が足りないかを見つけ出してくる必要がある。そういう要望をきちん取り上げ、それを何とか解決したり、解決方法を示したりできる、そういう人材を育てたいと考えている。

 そのために、ある程度の技術をベースにしながらも、2年生は、グループ学習で、一つのテーマについて問題点を考え、調べ、考察し、それをプレゼンテーションの形で表現し、聴衆に訴えていく授業が、最も重要な授業になる。このプロセスを1年間に3回ほどこなす。特に後期は半年かけて一つのテーマ、ここ数年は「仏教」という統一テーマのもとで、各班が何らかの個別テーマを見つけ、調査し、考察し、それをプレゼンにまとめて、最後にコンテストをする。

 三年生、四年生は、それまで機械的に分けていたクラスを、学生が自分で、自分のしたいことに合う先生を選んで、その先生のゼミに入る。ゼミでは、研究発表を中心とし、徐々に卒論に向けてのテーマ選びを進めていく。最終的には、卒論のために何らかのものを制作する。このとき、その制作に必要な技術があれば、その段階で必要な技術を身に付けることにする。四年生は、就活と卒論(卒業制作)がメインの柱になる。

 学生は非常によく勉強し、みんな時間外にも学科の建物に残って課題をこなし、作品を制作する。たとえば、学科のWebサイトも、全部で80ページ近くになるが、全部学生と教師が共同で手作りで作ったものだ。これは人文情報学科の具体的な授業内容やゼミの内容を、他にないくらい詳しく紹介しているが、同時にそのWebサイトが、人文情報学科の学生が何を作っているかの、ちょうどいい例になっている。

 以上のような話をし、直前にアップした人文情報学科のオフィシャルWebサイトを見せながら、授業内容や、学年毎の学習の進み方について説明をした。このWebサイトがあることで説明が具体的になり、非常に効果的だったように思う。

 中には、鳥取から生徒二人を連れた高校の先生が、進路開拓ということで尋ねてこられた。その高校にも情報系のコースがあり、そこの生徒をどこに進学させるかを検討しているとのことだった。電話で大学の入試センターに聞いたところ、WordやExcelをやるようなことを言っていたが、そのレベルでは高校で学んでいるので、わざわざ大学でやる必要がない。具体的にオープンキャンパスで先生に聞いて欲しい、と言われたので、鳥取から出てきた、とのことだった。その先生とは色々と学科の状況や、指導方針について、かなりつっこんだ話をした。やはり、高校生と話すのと違って、具体的にこちらのやりたいことを理解してもらえるいい機会になった。

 模擬授業も、前に書いたが、2年生の作品、3年生の学科のオフィシャルサイト作成プロジェクト、4年生のオンラインWebサイト構築ツールを作成している卒論、これらをそれぞれの学生に来てもらってプレゼンをした。僕はちょっとコメントを言うだけで、あとはつなぎの司会をしただけだったが、去年よりも人数が多かったように思う。これも、人文情報でやっていることの紹介として効果的だった。

 しかし、こうやってオープンキャンパスに来てくれた人には、学科の内容を具体的に紹介できたし、興味も持ってもらえたように思うが、来てくれた人の数は非常に少ない。僕は8月1日だけに参加したが、相談に来たのは5組くらいであり、模擬授業も去年より盛会とはいえ、20人くらいだった。来てくれない人の方が圧倒的に多いということである。そういう人には、具体的内容を説明する機会はない。Webサイトは出来る限り具体的に授業やゼミの様子を紹介する他、非常に多くの情報を提供している。ちょっとやそっとでは、その全部を見通すのは難しいくらい豊富な情報だと思う。せめて、このWebサイトを覗いてもらえたら、と思う。


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