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餓鬼道が連れて来た [雑感]

 餓鬼道がうちの庭で発見され埋葬して日、夜に僕が帰ってきてから、お経を上げ、そのあと疲れてはいたが、夜の9時半ごろ、近くの散歩に出かけた。

 その道すがら、近所の廃屋の荒れ果てた玄関先に、二匹の猫の影がよぎった。引き返してみると、子猫が二匹と母親猫が一匹、僕たちを避けて家の奥へと行きかけていた。きっと廃屋で子供を産んだのだろう。子猫は20cmくらいの小さい猫だった。よく、子猫の写真集に出てきそうなくらいの子猫だった。

 彼らは僕たちの出方を見守って固まっていた。僕はとてもゆっくりとしゃがんで、ゆっくりと手を差し出し、猫の声音を真似た。すると、子猫の小さい方がとことこと親猫から離れて半分くらいまで近づいて来た。そこに座ってじっとこちらを見ていた。何かご飯が出てきたら寄ってきそうな感じだった。僕はさらに、母親が子猫を呼ぶ、喉を鳴らすような声を真似てみた。あきらかにこちらに関心を持っている。

 まだ子猫は人間を恐れていないようだった。母親は後ろで警戒し、声を出さずに威嚇するような顔で、口をあけ「はー」と息を吐いていた。しかし、子猫はそんな母親の警戒心には無頓着なようだった。これはうまくすると連れて帰れるかも知れない。

 といっても、手を伸ばせば、すぐに手の届かないところに逃げてしまいそうだった。しばらくご飯を上げて警戒心を解く必要があった。

 餓鬼道を弔うことのできた晩に、新しい子猫と出会った。餓鬼道が自分の代わりにその猫を連れてきたように僕たちは感じた。

 その日、深夜にもう一度その場に戻って、僕はお皿に生餌を入れてきた。猫語で呼んでも答えはなかった。

 次の日、もう一度10時過ぎにその廃屋に行って声をかけたら、慌てて猫たちが奥に引き返していった。僕はフェンスをずらして中に入り、昨日のお皿が空っぽになっているのを見て、ふたたび餓鬼道の食べ残していた生餌をそのお皿に盛ってきた。フェンスの外にでると、恐る恐る子猫がそのご飯のお皿に近づき、そして、一心不乱に食べ始めた。お腹が空いているらしかった。食べるのに夢中で、僕が手を出し、猫語で呼んでも、無視されてしまった。

 翌日も同じようにご飯を上げ、しばらく自転車で回りを回ってからもう一度戻って、またしばらく、猫語で話しかけた。子猫たちはまだ齧り付くようにして食べていた。しかし、たぶんかれらの僕の存在は印象づけられただろう。猫語をはなす男の人は滅多にいないから。

 もう少ししたら、子猫を引き取ってこよう。このままにしていたら、遠からず、またいなくなってしまうだろうから。
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