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「びっくりするほど良いんだ」 [ゼミ・教育]

 私も最近iPodを手に入れた。それは、ただ良いというだけじゃない。びっくりするほど良いんだ。何故びっくりしたかというと、それは自分でも気が付いていなかった期待を充たしてくれたからだ。会社の企画担当部署じゃそういう期待を見つけることはできない。ただ、優れたデザイナーだけに可能なことだ。

これは、最近買った『ハッカーと画家:コンピュータ時代の創造者たち』(オーム社)というポール・グラハムという人の書いたエッセー集の「メイド・イン・USA」という章に書いてあった言葉だ(p.4)。

 このポール・グラハムという人は、有名なLispプログラマーで、Lispの本を何冊も書いているし、それがLispプログラマーの必読書になっている。そういう人だ。

 しかし、ここでこれを取り上げたのは、「自分でも気付いていなかった期待」をiPodが充たしてくれたことで、iPodが「びっくりするほど良い」と評価していることがおもしろかったためである。

 この訳は少し分かりづらいが、もっと平板に言ってしまうと、iPodを使ったところ、それまで考えてもいなかった楽しさを味わえた。そしてそれを知ってみると、やはりそれはそうあってしかるべき楽しさだった。そういう、ユーザー自身も気付いていなかった楽しさを掘り起こしたところがiPodの素晴らしいところだ、というのだ。

 僕は何もiPodが素晴らしいということを言おうとしているのではない。そうではなく、ユーザー自身も気付いていない欲求を、作り手の方が考えて掘り起こして、ユーザーにそれを教えてあげる、そういう作り方が大事だということである。

 僕も、プログラムを作るとき、ユーザーが、このくらいのことだろうと思っていること以上のことを実現してあげることを目指してきた。

 たとえば、それはものすごく高速に動く変換プログラムだった。チベット語をローマ字からチベット文字へ変換するソフトは、1Mのファイルの変換を2、3秒でやってしまった。速い。それは複数のローマ字転写方式も自動的に判断して、うまく変換してくれる。つまり、ユーザーは何も考えずにファイルをそのソフトのアイコンにドラッグすればいいだけだ。

 また、チベット語の文献のオンライン検索のCGIプログラム。これも速い。普通、図書目録の検索をすると、検索ボタンをクリックしてから表示されるまでに数秒かかる。さらにそれは10件ずつしか表示されないので、次の10件を表示されるたびに数秒ずつかかることになる。ところが、僕の作ったものは、検索ボタンを押してから1秒もかからずに、数十件のデータが一気に表示される。テーブルなんて使わないから、表示自体も速いし、検索でヒットした語句は赤で表示される。(たとえば、http://web.otani.ac.jp/cri/twrp/tibdate/Peking_online_search.htmlでbstan paという単語を検索してみて欲しい。)

 また、漢籍のオンライン検索では、検索語句が新字でも旧字でもヒットする。ユーザーはそれを使い分けなくてもかまわない。

 使ってみれば、分かるが、それはものすごく便利だし、他の同様のものを期待していたユーザーは、きっといい意味で、期待を裏切られる。つまり、期待以上の結果が出てくるのである。

 つまり、人のためにプログラムを作るときには、使う人にとってどういうふうであったら喜んでもらえるのか、期待以上だと思ってもらえるか、それを考えながら作るように心がけるべきなのである。


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