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プレゼンを作るのに時間がかかりすぎる [ゼミ・教育]

 今、僕の担当している2年生のクラスと、3年生のゼミとで、「人文情報学科をアピールする」というテーマでPowerPointのプレゼンを作ってもらっている。同じテーマを2年生と3年生でやるとは、手抜きだ、という意見もあろうが、それは深謀遠慮の故あることなので、単純な手抜きのわけではない。

 プレゼンは、6、7名のグループを作り、グループ毎に相談しながら作ることにしている。グループで意見を出し合うことで、一人では出てこない様々な意見やアイデアを集められるところに利点がある(はずである)。

 このテーマを始めたのは、4月の下旬からだった。もうかれこれ1月半がたっている。来週にはいずれも成果を発表することになっているのだが、ほとんどのグループがプレゼンを完成させられないでいる。発表が迫っている今週から来週の前半にかけては、授業時間以外にグループのメンバーが時間を都合して集まって、2コマなり3コマなり作業をしている。

 2年生のクラスは、前にも書いたが、必修の授業でクラスもグループも学生番号に基づき規則的に決められたものだ。そのためメンバーは打ち解けていないので、意見を出し合うのは難しいし、その上、必修であるため意欲に欠けている学生もいて、作業は難航していた。

 一方、3回生の方は、ゼミの仲間だし、最初から僕のゼミを選択していることで、似たような志向の学生が集まっているため、グループ内での人間関係は良好だった。

 しかし、いずれの学年もプレゼンの制作そのものには、ものすごく時間がかかっている。一月半で、約10分ほどのプレゼンを作れないというのは、時間がかかりすぎではないだろうか。どうして、このようなことになってしまったのだろうか。

 一つには、グループで調整しながらやることのマイナス面が出てしまっているのだろう。つまり、一人で好きにやれるのと違って、意見を調整したり、他の人の意見を気にしながら作業しなければならないので、効率が非常に悪い。そのためほとんどのグループは、部分毎にページを分割して、それぞれが作ったものを後で一つの書類にまとめる、というやり方をとっている。しかし、そうすると、それぞれの分担の中に重複した内容が出てきたり、統一をとるのが難しいような表現の仕方になったりし、決して誉められたものではない。

 また、テーマも難しすぎたようだ。無理なテーマというわけではないが、そもそも「人文情報学科」とは何か、その長所は何か、ということを考えることは、教員の方だって、説得力のある意見、人に分かるような意見を持っているわけではないので、まだ勉強途中の学生が何か新しいことを考え出せるはずがない。いきおい、大学のパンフレットやネット上の情報に頼ることになる。ところが、大学の公式ホームページは、大学の入試用パンフレットの内容をほぼそのまま載せているだけだし、それも何年も変化のない、抽象的な謳い文句だ。だから、自分たちの学んでいることとリンクしない。

 そして、このように内部でもよく分からないことが、それ以外の人たちが何か分かっているはずもなく、したがって、その公式サイト以外には、頼りになる情報源はない。何らかの情報を探してきて、それを要約するなり書き写すなりすれば、レポートが出来上がる、というようなやり方では、このテーマでプレゼンを作ることはできない。そうすると、意見はでないか、出てもみな同じようなものになってしまい、話を展開していくだけの素材が揃わない。

 普通、僕らがプレゼンを作る場合には、スキャナで画像を取り込んだり、デジカメで写真を撮ったりして、それらを適当に並べ、簡単なキャプションや各ページのキャッチコピーを書き込んでいって、あとは、アニメーションを設定していく。これで、2、3日の作業である。

 また、今学科全体のWebサイトのデザインや内容を考えているが、これは試行錯誤があって、大まかなアウトラインが出来上がるのには、やはり2、3日の作業である。

 こんな風に考えてみると、最大のネックは、そのテーマについてどんどんアイデアが出るようなテーマでないと、プレゼンを作るのは難しいということにある。もちろん、簡単なものばかりやっていては、何も身に付かないので、難しいものに挑戦するのは悪いことではない。少し無理目なものにぶつかることで、いろいろと勉強になる。たとえ、バランスが悪くても、自分の頭で考え、自分の言葉で表現できたものが、最終的には残るのである。忙しいなかを集まって仕上げをしなければならないのは、負担が大きいだろうが、その分、出来上がったときの喜びも大きいだろうから、それを目指してがんばって欲しい。きっと次のステップに(3回生は本当の学科のオフィシャルWebサイトを作る)プラスになるはずだ。


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コメント 2

くすのき

うーん、グループ作業ってのはコミュニケーションコストがものを言う、という感じですかね。作業の進め方も必ず水平作業(全員が同じものを作って最適物ができるまで再帰的にselect&merge)か、垂直作業(作業タスクを分割してそれぞれのタスクに各々を割り当て平行作業)かの選択をせまられますよね。
理想的に垂直作業が進めば内容の重複等は発生しないとは思いますが、まぁ理想というのは現実しがたいからゆえ理想なのでしょう。
ただ、グループ内での用語集を作って使用する用語を統一するとかしておければグループ内の作業のムダは省けただろうなぁ、とか個人的には思ったり。
とはいえやはり作業の進展云々というのは個々人の有するコミュニケーション・モチベーションに尽きるのでしょうか。
by くすのき (2005-06-04 13:31) 

yfukuda

コミュニケーション能力もモチベーションも大事です。しかし、コミュニケーションは、あるグループ内での人間関係でかなり改善されます。また、今回のように必修の授業よりもゼミの方がどちらもずっと高いはずです。

 でも実際には随分時間がかかっているのは、そもそもテーマが難しすぎたのだろうと思います。このテーマで学生が何か自分たちの個性的な意見を展開させるには、少し経験が浅すぎたようです。一つには、学科での経験が少ないこと、もう一つはプレゼンを作る経験が少ないこと。

 一般的に言えば、PowerPointに入る前に、十分に意見を出し合い、本質を見極めるところまで煮詰めていれば、プレゼンそのものにはそんなに時間がかからないと思います。ただ、学生の様子を見ていると、そこまで煮詰められず、PowerPointを起動してから考えているような気がします。
by yfukuda (2005-06-05 00:30) 

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