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大学導入科目も一段落 [ゼミ・教育]

高校から大学への転換をどうスムーズにするか、ということで、今年度から(昨年度は実験科目として開いていたが、)一年前期の必修として設けられた「大学での学びの発見」という授業を担当してきた。

 この授業については、4月頃に一度書いているが、探すのも面倒なので、もう一度趣旨を書いておこう。「学びの発見」というタイトルや、大学導入科目だというテーマから、大学でのノートの取り方や本の調べ方、レポートの書き方などの具体的な勉強の仕方を教える授業だと考えるかもしれないが、大谷大学でとり入れているのは、かなり違った構想のものである。

 高校までの勉強は、教科書に学ぶことが規定され、テストではどこまでその正解に近づくか、という「学習」が中心であった。それに対して、大学の学問には、正解は存在しない。前もって決まった答えはない。そもそも問題というか、テーマも与えられるものではない。大学では、自分で問題を考え、自分で調べ、自分で解決策を提示していく必要がある。答えがないから、何かに取り組んでも、直ぐには解決できないし、またいろいろな見方や考え方があり得る。

 それを「学びの発見」では、グループ学習をすることで、効率的に体験できるようにした。一人ではなかなか常識の枠は破れない。それを他の人とのコミュニケーションの中で色々と刺激し合うことで、一人では思いも付かなかったことを思いつくようになる。また思いつくだけではなく、それをさらに展開し発展させていくときにも、一人ではなく、みんなで意見を出し合いながら追求していく。一人ではなかなか最後までねばり強く追いかけることができないことでも、みんなでやれば、途中で挫折せずにやり遂げられる。

 具体的には、まずブレーンストーミングで、いろいろなアイデアをどんどん出せるように、常識の垣根を取り払う。と同時に、グループ内での親睦を深め、自由に意見を言えるような関係を作る。

 次に、拡散したアイデアを、一つ一つ紙片に書き、それらをグルーピングしながら見出しを付けていく。KJ法もどきである。これは、ただ単にアイデアを放言するだけではく、それを関係づけ、構造化し、まとめていく作業である。見出しは、何段階かの層をなす。かなり詳細な目次のようなものである。

 そして、それを元にレポートを書く。アウトラインを既にKJ法で作った上で、それに則った文章を作る練習である。ここに来て、学生はやっとブレーンストーミングからKJ法、そしてその構造化という作業が、レポートやひいては卒論につながることを理解する。

 従来の導入教育では、こういう本質的な思考方法の変革ではなく、学問のテクニックや工具書の知識、レポートを書かせても、日本語のチェックなど、非構造的なことを教えてきたように思う。そうでなければ、「知のなんとか」というような、学問上の新しい視点を紹介するような授業・講義だったように思う。まあ、東大のように放っておいても自分で研究をしていく学生が多ければそれでもいいのだろうが、普通は、レポートや卒論と言えば、どこかの誰かの文章をコピペして、見た目のお茶を濁すだけであることが多い。多少ましでも、引用と地の文の区別をする程度で、そこに展開される思考は、やはり紋切り型、あるいは思考でさえなく、調べたことを解説します、といった論文であることが多い。

 その枠を打ち破るには、たとえ稚拙でも自分の頭で考え、自分のアイデアで勝負する、という方法が体に染みついていなければならない。それは一年生のときからやって始めてうまくいく。実は僕は二年生以上のゼミなどでも同様のやり方を取り入れているが、結局うまく行くことは少ない。グループで自由に意見を出すように言っても、黙ったまま、何も新しいことが出てこない。すでに大学生の知性は、自由な発想が出来るような生き生きとしたものを失ってしまっている。

 とは言っても、これは目論見あるいは理想であって、現実にはそれほどうまくコトが運んでいるわけではない。とりわけ、グループ活動では、その中のメンバーによって、その効果は大きく変わる。一人でも真面目に取り組まない人がいたり、いつもぶちこわしの意見ばかりを言う人がいたりすると、その人だけではなく、グループ全員の学習意欲が低下し、したがって、学習効果はほとんど期待できなくなってしまう。感想を書かせると、おおよそ2割程度は、そのような不満を持っている。その他の8割が好意的に取り組んでくれているだけに、その2割の学生をどうするかは頭の痛い問題である。

 真面目に取り組まない学生について、これはこのようなグループ学習だけではなく、大学の授業全体に対しても大きなブレーキになっている。この問題はまた後日考えてみることにしよう。

 昨日で、この授業は修了した。学生にはそれぞれ感想を書いてもらった。その内容の紹介はまた明日にでもすることにしよう。


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