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レイプ・オブ・チベット [チベット]

ショッキングなタイトルである。なかなかこんな言葉は使えない。しかし、内容は、そのタイトルからは想像できないほどしっかりした本である。たぶん、この3月に起こったチベット人の反中国運動の後、にわかチベット物知り文化人が増えた、『現代思想』でも「チベット特集」が組まれているが、誰もチベットを長い間見続けてきた人は書いていない。そしてピントのずれたことを書いている。

何事にも年季というものは必要である。学問の世界もしかり。にわか勉強で何とか評論めいた意見は書けても、長年取り組んできた専門家から見れば、やはりピントのずれた勝手な解釈を平気で書いていることがある。それがずれているということさえ、本人は気付かない。そして、さらに何も知らない一般の人は、どの内容が正しいのかも分からず、数の多いもの、声の大きいもの、権威ある肩書きやメディアなら、正しいことをいっているだろうと判断してしまう。

もちろん、にわか勉強でも筋のいい情報に依拠して、それを再生産している場合には、それほど被害は大きくない。しかし、その真贋の判断は一般の人には難しい。

そういう中で、チベット問題全般についての、現在日本語で読める最も正確な情報と解説をしているのが、この本である。チベット問題の難しいところは、中国側が大量に声高に繰り返し主張することを、各種メディアが無批判に垂れ流し、中国人がその洗脳に染まっているばかりではなく、多くの日本人もそれを前提とした議論をしてしまうことにある。

しかし、中国側の言い分とチベット人、あるいはダライラマの言い分を公平に、論理的に比べてみれば、中国側の言い分は全て、事実ではなく、本人達の願望を述べているに過ぎないことが明瞭である。問題はとてもクリアなはずなのに、それをクリアに理解している人は少ない。

この本は、まさにそういうクリアな視点から、クリアなことしか書いていない。チベット問題を語る人は、この本を読んでから語るべきであり、しかし、この本があれば、それ以上の何を語る必要があるのか、分からなくなるに違いない。マスコミは、情報を再生産させることで購読者を確保しようとするから、決定的なものが出ても、なお、それ以外のものを求めて、いろいろな人を担ぎ出すだろう。後は読者が情報を見極める目を持たなければならない。そのための正しい情報源がここにある。

レイプ・オブ・チベット―中華的民族浄化作戦 (晋遊舎ブラック新書 11)

レイプ・オブ・チベット―中華的民族浄化作戦 (晋遊舎ブラック新書 11)

  • 作者: 西田 蔵之助
  • 出版社/メーカー: 晋遊舎
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 新書


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