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iPhoneとiPadでチベット文字を使おう [チベット]

 毎年、同じ光景で同じ写真になってしまうが、今年の11月26日の銀杏はこんな感じだった。まだ少し緑を残し、石畳も枯れ葉に埋もれていない。来週が見頃だろうか。

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 さて、iPhoneやiPadのiOSが先週(11月23日)4.2.1にバージョンアップした。ちょうど北朝鮮の延坪島砲撃の日だったので(かどうかは分からないが)、新聞でのニュースにはならなかった。iPhoneのiOSは既に4.1になっていたので、マイナーバージョンアップという位置づけだが、われわれチベットをやっている者にとっては、大きな意味のあるバージョンアップであった。つまり、この4.2からチベット文字の入力・表示ができるようになったのである。

 チベット語を使うのにチベット文字を使う必然性はない。しかし、実際にチベット文字を使い始めたら、ローマ字で転写したチベット語には戻りたくなくなる。今だって、ローマ字転写されたチベット文を読むことはあるし、できないわけではない。でも、やはりチベット文字の方がずっと読みやすい。

 そうだとしても、iPhoneやiPadでチベット文字は使わなくてもいいだろう、と言えないこともない。もちろん、チベット人ならばチベット文字を使いたいはずだ。しかし、外国人であるわれわれは、チベット文字を使わなくたって構わないではないか。そういう声もあるのを知っている。そういう人を説得しようとは思わないし、さらに、チベット語を使わない人にとってはどうでもいいことだということも分かる。

 それでも、実際にiPhoneやiPadでチベット文字を入力したり、表示したりできるようになったら、いろいろと「便利なこと」(つまりなくても困らないが、あったら便利だ、ということ)が出てくるのである(後で、現在の目玉アプリをご紹介するつもりだ)。アップルがiOSでチベット文字をサポートしてくれたことを感謝したい。

 とは言え、これを実現できたのは、Mac OS、それからMac OSXとチベット文字をサポートするシステムを開発してきたTibetan Lanuage Kit Project(TLKプロジェクト)の活動があったからである。このプロジェクトはご存じだろうか。Mac OSXに搭載されているチベット文字のシステム(基本的にはフォントとキーボード)は、このTLKプロジェクトが開発し、アップルに寄贈したものである。そしてこのプロジェクトは、日本で進められてきたものである。その前史は措くとして、大谷大学の真宗総合研究所にあるチベット研究班のプロジェクトとして、大谷大学を通じてアップルに寄贈されたのである。だから、キーボードに「Tibetan - Otani」という名称が付いているのである。

 今回のiOSのチベット文字サポートも、基本的にはその延長線上にTLKプロジェクトの一環として開発が進められてきた。特にプロジェクトの中心メンバーである野村正次郎さんの努力が実ったものである。このフォントはKailasaは、もともと僕が随分前にデザインし名付けたものを基礎にして、改良が加えられて完成したものである。僕もMac上のチベット文字処理に関しては、もう20年近く関わっている。前回の「インド論理学研究会」が30年前であるから、もう一つの節目なのかもしれない。

 アップルはiOSのバージョンアップのときに、チベット文字の話は全くしていないが、バージョンアップの直後から様々な情報がツイッター上で流れ始めた。しかし、その開発が日本人のプロジェクトの、特に野村さんが中心になって開発し実現できたことを知っている人は少ない。

 まずは、たまたま気付いたブログの言葉を紹介しよう。

There has been a lot of excitement this week about the robust support for the Tibetan written language in Apple’s iOS 4.2 for iPhone and iPad. This is a fantastic achievement that many contributed to, and that Apple should be loudly applauded for.
From: Nathan and his Open Ideals (http://openideals.org/) / Nov. 26 2010
「今週は、極めてエキサイティングなことがあった。iPhoneとiPadのiOS 4.2(アップル社)でチベット文字がきちんとサポートされるようになったのである。これは多くの人が貢献して実現した素晴らしいことであり、アップルは大きな声で賞讃されてしかるべきである。」(「ネイサンとオープン・アイデアルズ」より)

 ツイッター上の書き込みについては、ここに「まとめリスト」を作っておいた。全部をフォローできていないかもしれないし、またリツイートだけのものは省略している。

 自分の見慣れた文字がiPhoneやiPadで表示されるのを見るのは、とてもいいものだし、みんなが喜んでくれているので、その喜びは尚更である。また、今回、いろいろと一人で努力してくれた野村さんに感謝をしたいと思う。

 さて、単に入力できるだけではなく、チベット文字を使ったWebサイト(これも大谷大学の真宗総合研究所チベット班や僕のゼミでの卒業制作として作ったもの)がiPadやiPhoneで使えるようになった。

1. 北京版チベット大蔵経目録

2. 真宗総合研究所チベット班公開のチベット文献のKWIC検索

などであり、さらに今年度もまたいくつかのサイトを作る予定である。これらはみな研究者にとっては基本的な情報源であり、これがチベット文字で入力できたり表示できたりするのは、とても気持ちがいい。

 さて、以上は僕が関わってきたものの話だが、このチベット文字を利用したチベット語の辞書があっという間に公開されていた。これはさっきのツイッターの書き込みで知ったことだが、情報が早いのには驚いた。Rangjung Yeshesのnitarthaの辞書サイトは、オンラインのチベット語辞書サイトとして有名である。しかし、これはローマ字転写で入力・表示するシステムであった。もちろん、これをチベット文字化してもよかったのだろうが、もっと便利なものを作ってくれた。オンラインではなく、単独で動く辞書アプリにチベット文字化したデータを提供してくれているのである。iPhone版は、こんな感じ。

iPhone_Dic1.jpgiPhone_Dic2.jpg

そして、iPad版は、こんな感じ。

iPad_Dict.jpg

残念なことに、辞書アプリは別なので、それぞれで700円ずつ払わないといけない。特にiPad用のDictは、あまり出来のいいソフトではない。たとえば、ソフト自身にクレジットが表示されず、説明もない。iTunes上では、説明があるものの、得たいのしれない北京の何とか公司作である。データの転送にも一苦労した。WifiでのFTP転送がうまく行かなかったのだ。ご存じかもしれないが、このiOS 4.2は、まさにiPadのWifi接続にバグがあって発表が10日ほど延期されたのである。まだ完全には直っていないのかも知れない。早くも12月13日には4.3が出るという噂もある。だが、とにかくデータを転送してからは問題なく使えている。

 見た目はiPadも分かりやすくできているが、やはりiPhoneでいつでもどこでもチベット語の辞書が引けるのは便利である。iPadではテキストを表示していたりするので、わざわざ辞書アプリを起動するようなことはしたくない。辞書は電子辞書のようにコンパクトになって初めて使い勝手がよくなる。

 さて、この情報は、Digital Tibetanという情報サイトに掲載されていた。もちろん、iOSだけではなく、WindowsやUnixの話題もいろいろと掲載されているが、最新のニュースはやはりiPhoneでのチベット文字のサポートである。

digital_tibetan.png

 iPhoneなどでのチベット文字用キーボードの使い方も詳しい。そして、上に挙げた二つの辞書についても、辞書アプリのリンクからインストールの仕方まで詳しく紹介されている(iPhone & iPod touch用iPad用)。iPhone、iPod touch、iPadをお持ちの方は、何はなくともこれをインストールすることをお薦めしたい。どういうわけか辞書を引くのが楽しくなること請け合いである。
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